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大潮の道 756 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/08/12(土) 02 28 33 大潮の道/マイクル・スワンウィック 『グリュフォンの卵』が滅法面白かったので続けて読んでみた。 南米マジックリアリズム+サイバーパンク、あるいはコンラッドとカフカの奇怪な混合。 魅力的なSFガジェットてんこ盛りな割りに、その印象はスタンダードなSFとはかなり異質で、 ジャンルに収まらない酩酊感を味わった。 大枠は作中でただ「役人」とだけ呼ばれる男が違法テクノロジーを盗んだ男を植民地惑星に追うミステリー仕立てだが、 変身の神話でもあると同時に、自己再発見の物語でもあるし、オカルティズムに性や植民地の問題も含まれている。 そんな錯綜した構造の上に、異様な密度で書き込まれたガジェット、キャラクター、背景も相俟って、 とても一読しただけでは全貌が掴めない。 ゴーメンガーストとバベルの図書館を掛け合わせたような星間政府の本拠〈謎迷宮〉の描写だけで十分長編5本分くらいのアイディアが詰まっているのに、 それをほんの1章の挿話に留めているストイシズム(あるいは贅沢)ときたら! 10点 グリュフォンの卵 180 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/04/26(水) 00 59 53 グリュフォンの卵/スワンウィック ヒューゴー賞の5編は普通に面白かったが そのほかのは難しいのが多かった…… 特に最初のやつと表題作、わけわからん 質はすごく高いと思うけど、作風が幅広すぎて とらえどころがない感じ ストレートな宇宙SFやエンタテインメントも 書ける人だということは分かった。 「死者の声」がいちばんよかった。 8点 283 名前:でへ 投稿日:2006/05/07(日) 17 33 08 グリュフォンの卵 マイクル・スワンウィック ハヤカワSF 同じ作者の作品で、前に読んだ「大潮の道」は、ラストに 激しく違和感があっていまいち面白くなかった。 今回の短遍集はなかなか面白い、 新しいテクノロジーによって、人間は人間でなくなって しまうのか? という重い問いがあってなかなか良い。 「大潮の道」同様、少し、「文学してる」って感じの 話があるのが、気になるヒトは気になるでしょう 8点 708 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/08/04(金) 00 22 05 グリュフォンの卵/マイクル・スワンウィック ニール・スティーヴンソン風テクノゴシックを思わせる盗賊譚やイーガンばりのアイデンティティ問題を扱って見せたかと思えば、、 オーソドクスなタイムトラベルものや惑星=生物ネタなんかも描いてみせる。 ダンセイニやゼラズニィへのオマージュ溢れる小品なんかもあって、とても一人の作家の短・中編集とは思えないお得感一杯の一冊。 粒揃いの十篇ではあるが、特に印象に残ったのは、「犬はワンワンと言った」「世界の縁にて」「ウォールデン・スリー」の三作。 時に「世界の縁にて」は短編として完璧な出来で、鮮やかなオチに唸らされた。 9点
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足場が悪く見晴らしの良い砲戦有利マップ。主戦場となる中央の島でのミサイルの撃ち合いになりやすい。しかし戦力が一極集中しやすいので、裏からの奇襲に注意。 -- (名無しさん) 2009-04-26 20 27 46 回復役が木こりする場所が主戦場の外れになりがちなので、裏からの奇襲でリペアを失いやすい。対空に自信がある人は護衛してあげるといいかもしれない。 -- (名無しさん) 2009-04-27 15 44 30 10月8日のアップデートで復活。 以前と比べ中央に陸地ができ、コンテナ状の障害物が多数設置されている。 -- (名無しさん) 2009-10-08 14 53 23 コンテナの上に砲戦が居座ったりするとかなり厄介 引きずり落とすか空から攻撃して撤退してもらうかしてどうにかしてもらいましょう -- (名無しさん) 2009-11-01 20 12 07 陸も豊富な障害物を盾にして上に居座る砲を攻撃して活躍でき…なくもないがそれでも動き辛いことに変わりは無い。 -- (名無しさん) 2009-12-13 04 05 24
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主催者 日本中央競馬会 競馬場 京都競馬場 創設 1958年4月13日 距離 芝・外1400m 格付け GII 賞金 1着賞金5500万円、賞金総額1億480万円 出走条件 サラブレッド系3歳以上(国際)(指定) 負担重量 グレード別定 スワンステークスは、日本中央競馬会 (JRA) が京都競馬場の芝外回り1400メートルで施行する競馬の重賞(GII)競走である。毎日放送から寄贈賞が提供されているため、正式名称は毎日放送賞スワンステークスと表記される。競走名は英語で白鳥を表す「swan」から来ており、1957年に京都競馬場内の池の白鳥をオランダから輸入したことに由来する。 概要 1958年に5歳(現4歳)以上の競走馬によるハンデキャップの重賞競走として創設されたのが始まりで、創設当初は芝1800mにて行われていた。その後1961年に負担重量を別定に、1972年には芝外回り1600mに条件を変更した。 1984年のグレード制導入により本競走はGIIに格付けされ、4歳(現3歳)馬ならびに外国産馬の出走が可能になった。さらに施行時期を現行の10月下旬に、施行距離を現行の芝外回り1400mに移設し現在にいたっている。 1995年には指定交流競走となり、地方馬にも門戸が開かれ、1998年からは国際競走として外国調教馬の出走も可能になった。2007年に日本のパートI国昇格に伴い、国際グレードのGII競走に指定されている。 近年は特にマイル路線に駒を進めた3歳馬や、スプリンターズステークスを使った古馬がこのレースを挟んでマイルチャンピオンシップに向かうことが多いが、有力馬は毎日王冠(東京競馬場・芝1800m)や天皇賞(秋)(東京競馬場・芝2000m)といった中距離のレースを経由して向かう傾向があり、2000年代以降、当競走からマイルチャンピオンシップを制したのは第53回のエーシンフォワード1頭のみで、2着に入ったのも第50回のスーパーホーネット、第55回のグランプリボスの2頭のみである。一方、マイルより短距離に実績のある競走馬が多く出走することもあり、ほぼ毎年のようにタイムは速く、1分19秒台を記録することも目立っている。1996年にこのレースでスギノハヤカゼが記録したコースレコードは未だに破られていない記録として残っている。なお、地方所属馬に限られるが、上位2着までにマイルチャンピオンシップへの出走権が与えられるトライアル競走である。 優勝馬にかけられるレイは長らく赤色だったが、2008年は青色に、2009年からは白色に変わった。 出走資格はサラ系3歳(旧4歳)以上のJRA所属馬(未出走馬及び未勝利馬は除く)、地方所属の競走馬(3頭まで)及び外国調教馬(9頭まで)。 負担重量は3歳54kg(11月に施行される場合は55kg)、4歳以上56kg、牝馬2kg減を基本とし、 施行日当日から1年前の開催週以降のGI競走(牝馬限定競走を除く)1着馬は2kg増 施行日当日から1年前の開催週以降の牝馬限定GI競走またはGII競走(牝馬限定競走を除く)1着馬は1kg増 施行日当日から1年前の開催週より過去のGI競走(牝馬限定競走を除く)1着馬は1kg増 以上の条件で斤量が課せられる。ただし2歳時の成績を除く。 歴史 1958年 - 5歳(現4歳)以上の競走馬によるハンデキャップの重賞競走としてスワンステークスが創設され、京都競馬場・芝外回り1800mで施行された。 1959年 - 当年のみ「皇太子殿下御成婚祝賀競走 スワンステークス」として施行。 1960年 - 前年の9月1日から日本競馬の時計が変更になったのに伴い、時計表示が1/5秒表示から1/10秒表示に変更。 1961年 - 負担重量を別定に変更。 1965年 - 関西テレビ放送から寄贈賞を受け、名称を関西テレビ放送賞スワンステークスに変更。京都競馬場の改修工事による振替開催により、阪神競馬場・芝1800mで施行。 1972年 - 施行距離を芝外回り1600mに変更。 1980年 - 京都競馬場のスタンド改築工事による振替開催により、小倉競馬場・芝2000mで施行。久保道雄が調教師として史上初の連覇。 1984年 - グレード制施行によりGIIに格付け。開催時期変更(5月から10月に移動)に伴い、出走資格を4歳(現3歳)以上に変更。施行距離を現在の芝外回り1400mに変更。混合競走に指定。関西テレビ放送がローズステークスへ寄贈賞変更により、名称をスワンステークスに戻す。 1991年 - この年以降、天皇賞(秋)の前日に施行。 1994年 - 京都競馬場の改修工事による振替開催により、阪神競馬場・芝1400mで施行。サクラバクシンオーが芝1400mの日本レコード1 19.9で優勝。 1995年 - 指定交流競走に指定。ヒシアケボノが芝1400mの日本レコード1 19.8で優勝。 1996年 - スギノハヤカゼが日本レコード1 19.3で優勝し、同レースで3年続けて芝1400mの日本レコードが塗り替えられた。 1998年 - 国際競走に指定され、外国調教馬が4頭まで出走可能となる。 2000年 - 京都4歳特別廃止により毎日放送から寄贈賞を受け、名称を毎日放送賞スワンステークスに変更。外国調教馬の出走枠が5頭に拡大。 2001年 - 馬齢表示の国際基準への変更に伴い、出走資格が「4歳以上」から「3歳以上」に変更。 2005年 - 本田優が騎手として史上初の連覇。 2006年 - 牝馬限定競走優勝馬の負担重量を軽減。 2007年 - 国際セリ名簿基準委員会により国際GII競走に指定。日本のパートI国昇格に伴い、外国調教馬の出走枠が9頭に拡大。 2012年 - 基本負担重量を3歳55kg(11月に施行される場合は56kg)、4歳以上57kg(牝馬は2kg減)から3歳54kg(11月に施行される場合は55kg)、4歳以上56kg(牝馬は2kg減)に変更。 2014年 - この年から当競走の1着馬にマイルチャンピオンシップへの優先出走権が付与される。 歴代優勝馬 回数施行日優勝馬性齢タイム優勝騎手管理調教師馬主 第1回1958年4月13日ナンバイチバン牡51 51 3/5大沢真玉谷敬治浜田尚子 第2回1959年4月5日ゴールマイト牡41 54 0/5大久保正陽大久保亀治飯塚一 第3回1960年4月17日ミンシユウ牡41.52.9坂田正行仲住達弥鈴木美智慧 第4回1961年4月9日コダマ牡41 52.5栗田勝武田文吾伊藤由五郎 第5回1962年4月8日シーザー牡51 50.6清田十一伊藤勝吉伊藤由五郎 第6回1963年4月10日シモフサホマレ牡41 53.1境勝太郎矢野幸夫遠田光子 第7回1964年4月12日メイズイ牡41 55.8保田隆芳尾形藤吉千明康 第8回1965年4月11日アサホコ牡51 51.8加賀武見藤本冨良手塚栄一 第9回1966年4月17日バリモスニセイ牡51 51.3諏訪真諏訪佐市小杉咲枝 第10回1967年5月7日エプソム牡51 52.2山本正司伊藤修司谷田俊二郎 第11回1968年2月25日リユウフアーロス牡51 51.9宮本悳橋本正晴三好諦三 第12回1969年4月20日ダイイチオー牡41 50.2山本正司高橋直三上田正次 第13回1970年2月15日リキエイカン牡41 50.9高橋成忠柏谷富衛水上力夫 第14回1971年1月31日フアストバンブー牡41 53.3山本正司伊藤修司竹田辰一 第15回1972年1月30日タカラローズ牝41 39.4領家政蔵田中良平市川武二 第16回1973年5月13日フセノスズラン牝51 36.5野村彰彦中村覚之助浮田商事(株) 第17回1974年5月19日フジノタカワシ牡41 36.3飯田明弘中村好夫今津惣七 第18回1975年5月11日イットー牝41 36.5簗田善則田中好雄(有)荻伏牧場 第19回1976年5月16日ロングフアスト牡41 35.9松田幸春松田由太郎中井長一 第20回1977年5月15日フローカンボーイ牡41 36.3今岡正佐藤勇島田進 第21回1978年5月7日リキタイコー牡41 35.9福永洋一服部正利水上力夫 第22回1979年5月6日ホクトボーイ牡61 36.2田島良保久保道雄森滋 第23回1980年3月9日アグネスプレス牡52 06.8須崎昇久保道雄渡辺孝男 第24回1981年5月10日サツキレインボー牡41 35.0米元孝一田之上勲堀協操 第25回1982年5月16日アグネスベンチャー牡41 34.2久保敏文久保道雄渡辺孝男 第26回1983年5月15日ハギノカムイオー牡41 35.1伊藤清章伊藤修司日隈広吉 中村和夫 第27回1984年10月28日ニホンピロウイナー牡41 21.4河内洋服部正利小林百太郎 第28回1985年10月27日コーリンオー牡41 22.2小屋敷昭白井寿昭伊藤博仁 第29回1986年10月26日ニッポーテイオー牡31 21.5郷原洋行久保田金造山石祐一 第30回1987年11月1日ポットテスコレディ牝41 22.8西浦勝一松永善晴(有)ポット牧場 第31回1988年10月30日シンウインド牝41 23.0武豊二分久男林幸雄 第32回1989年10月29日バンブーメモリー牡41 21.7松永昌博武邦彦竹田辰一 第33回1990年10月28日ナルシスノワール牡41 21.4安田隆行田之上勲粟田政 第34回1991年10月26日ケイエスミラクル牡31 20.6南井克巳高橋成忠高田喜嘉 第35回1992年10月31日ディクターガール牝61 21.4岸滋彦宮本悳北川威 第36回1993年10月30日シンコウラブリイ牝41 21.9岡部幸雄藤沢和雄安田修 第37回1994年10月29日サクラバクシンオー牡51 19.9小島太境勝太郎(株)さくらコマース 第38回1995年10月28日ヒシアケボノ牡31 19.8角田晃一佐山優阿部雅一郎 第39回1996年10月26日スギノハヤカゼ牡31 19.3田島裕和鹿戸幸治杉江義夫 第40回1997年10月25日タイキシャトル牡31 20.7横山典弘藤沢和雄(有)大樹ファーム 第41回1998年10月31日ロイヤルスズカ牡51 21.9上村洋行橋田満永井啓弐 第42回1999年10月30日ブラックホーク牡51 20.2蛯名正義国枝栄金子真人 第43回2000年10月28日ダイタクヤマト牡61 20.4江田照男石坂正中村和子 第44回2001年10月27日ビハインドザマスク牝41 20.8松永幹夫北橋修二(有)サンデーレーシング 第45回2002年10月26日ショウナンカンプ牡41 19.8藤田伸二大久保洋吉国本哲秀 第46回2003年11月1日ギャラントアロー牡31 20.2幸英明崎山博樹冨沢敦子 第47回2004年10月30日タマモホットプレイ牡31 21.9本田優南井克巳タマモ(株) 第48回2005年10月29日コスモサンビーム牡41 21.5本田優佐々木晶三岡田美佐子 第49回2006年10月28日プリサイスマシーン牡71 20.3松岡正海萩原清池谷誠一 第50回2007年10月27日スーパーホーネット牡41 20.7藤岡佑介矢作芳人森本悳男 第51回2008年11月1日マイネルレーニア牡41 19.9佐藤哲三西園正都(株)サラブレッドクラブ・ラフィアン 第52回2009年10月31日キンシャサノキセキ牡61 20.3C.スミヨン堀宣行吉田和美 第53回2010年10月30日マルカフェニックス牡61 21.0福永祐一松永昌博河長産業 第54回2011年10月29日リディル牡41 19.4小牧太橋口弘次郎前田幸治 第55回2012年10月27日グランプリボス牡41 20.5内田博幸矢作芳人(株)グランプリ 第56回2013年10月26日コパノリチャード牡31 20.8浜中俊宮徹小林祥晃 第57回2014年11月1日ミッキーアイル牡31 20.3浜中俊音無秀孝
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二人の囚人が鉄格子から外を眺めた。 一人は泥を見た。一人は星を見た。 (フレデリック・ラングブリッジ『不滅の詩』) ――――――――――――――――――― 「ワシはのぉ先生、マッサージこそが最強の健康術だと思っておるのだ。 腰は軽くなるし凝りもほぐれる、いいことづくめだ!」 人を攫っては解体し、臓器を販売することで財を築いたゴルガーンは、 馴染みの顔をしたマッサージ師へ得意げに語った。 うつ伏せになってベッドへ寝っ転がっているため、正面にある鏡を通しての会話だ。 マッサージ師は真剣な表情でオイルマッサージを行いながらも、 でっぷりと太った不摂生な身体で、よくもまぁ健康術などと言える、と感心する。 「………それは光栄ですね」 マッサージは西洋医学の理学療法だ。 血液とリンパ液の循環を改善させることが目的であり、 筋肉の硬直を緩めることはその手段に過ぎない。 そんな風に、つい最近知った知識(・・・・・・・・・)を教えて差し上げようかと思ったが、 気分を害されても都合が悪い。 なに、施術で気分よくなってもらうこともまた、マッサージ師の仕事と思えばスルーもできる。 「鋼鉄で出来たワシの身体をしっかりと保ってくれよ」 「………ええ、素晴らしい肉体です。日々の積み重ねが如実に見えるようです。 最善を尽くさせていただきます」 その積み重ねとは、つまるところ暴飲暴食であり酒池肉林なのだが。 しかしゴルガーンは完全にリラックスしきっていたため ――というよりも、自慢して気持ちよくなっているため――マッサージ師の皮肉に気づかない。 マッサージ師はゴルガーンの背中にオイルをまんべんなく広げて、心臓の方向へ揉みこんでいく。 血液循環血液循環。 ……ちなみに東洋医学に寄っている按摩は心臓から遠ざかる方へ揉んだり叩いたりするらしい。 なんか『気』とかを全身に巡るようにするのが目的だからだ。 もし依頼主(・・・)が按摩師だったら勉強時間が数倍は必要だっただろう。 しかし勉強してもオイルマッサージとは、きつい仕事だ。 全身を使い、苦痛を与えないようにしつつも体重をかけて押し込まなくてはならない。 楽な仕事などありはしないという思いを新たにする。 いくら大金を積まれても、ゴルガーンの屋敷にマッサージ室があろうとも、 週一でこの重労働はうんざりするだろうに。しかも悪党で嫌な感じの壮年男性。 そんなきたねぇ犯罪者であるところのゴルガーンはさらに続ける。 「このあいだも事業を拡大したのだ! 保管庫(・・・)を大きくしてだな、従業員を増やした。 もっと多くの商品を扱える」 「………ビジネスですね」 「ぐふぐふ、先生もどうだ? 臓器に困っていたら、初回だけだが格安で売ってやるぞ」 「………いえいえ、わたくし仕事へ誇りを持っておりますので臓器はもう困らないように施術しますし 人もまた――ああ、申し訳ありません、仕上げをしますね」 マッサージ師はベッドに登り、ゴルガーンの腰あたりで膝立ちになる。 そして、ゴルガーンの上半身に手を回して、ゆっくりと優しく持ち上げた。 ゴルガーンは海老反りの態勢になる。 そこで初めて、でっぷり太った悪党は違和感を覚えた。 マッサージは整体とは違い、身体を持ち上げたり強く捻ったりはしない。 「……ん? 先生なんだこれ―――は―――ッ!?」 鏡を通して見たマッサージ師の姿は変貌していた。 人の形をした闇――ブラックスワンが、マッサージ師の制服を着て、ゴルガーンを捕縛していた。 「な―――ッ!」 「………ああ、お静かに。廊下にいる護衛様方のご迷惑になりますから」 黒い人影は、一筋の光も通さない闇を塗り込んだような手でゴルガーンの口を覆った。 「――ッ?!」 「………どうしてここに? こうしてここに」 奇妙なことに、黒いのっぺらぼうな顔から色が抜けていく。 そしてその相貌はゴルガ―ン馴染みのマッサージ師と同じになった。 「………簡単な特殊メイクですね。声も変声機で――……こんなふうに」 マッサージ師の声からブラックスワンの声に変化する(元に戻る、という表現の方が正しい)。 淡々と奏でられる皮肉さを感じさせるテノールでブラックスワンは言う。 「ご存知ですか? 変える方、変えられる方、双方の声を集積すれば、変声機は作れるんですよ。 手間はかかりますし、私の声が依頼主の声になるまで――結構な遅延(ディレイ)が発生するんですけどね」 いつバレるかドキドキしました――と顔を再び漆黒へ染めつつ淡々とブラックスワンは続ける。 抑揚も薄いのに、表情もまったく読み取れないのに、楽しくて楽しくてしようがないという、 彼の感情だけは理解できる。奇妙な語り口だった。 「――ッ!」 「ええ、そうです、裏切られたんです。貴方。しかし……不真面目だと思いませんか? 臓器売買を見て見ぬふりをして貴方に雇われていたのに ――ご自分の家族が、攫われたからといって手のひらを返すなど。 それならば依頼主は何を仕事にしていたというのでしょう? まぁ、そんな不真面目な方にお給金を貰っている私が言うのもなんなんですけどね」 「―――ッ!?」 「ええ、そうです。無節操な規模の拡大によって、一般人が……彼の娘が ――ええ、此処に来る前に保管庫を見てみましたが見事に臓器提供に相応しい形態に、 ジョブチェンジ(・・・・・・・)していました。 その場合はこのようにバックボーンを説明してから殺してくれ、と要望が」 伝えるべきことは伝えた。これで条件は達成だ。 ブラックスワンは左手でゴルガーンの口を押え、彼を海老反りにしつつ右腕を自由にする。 そして一丁の銃を取り出した。 ル・マット式リボルバー。 1855年に特許が取得された――つまりとっくのとうに特許は切れている――正真正銘の古銃である。 ただオリジナルのパーカッション方式とは違い、より使いやすいピンファイア方式。 なにせ”殺し”に使っているのだ、あまり浪漫に偏重してもいけない。 これで殺すことが、ブラックスワンの署名だ。 こういう目印をつけておかないと実績が奪われたり、 暗殺したのに事故死扱いされて法螺吹き呼ばわりされてしまうのである。 裏社会の厳しさよ。 ブラックスワンはル・マット式リボルバーの撃鉄を起こし、 背中からゴルガーンの心臓へぴたりと銃口を当てる。 「あなたの心臓の値段はいくらでしょうか? 多くの心臓を売り払い、巨万の富を築き、そしてふくよかな脂肪さえ増やした心臓の値段は――」 銃声。 「――いくらだろうと、これで無価値です。お粗末様でした」 ブラックスワンはベッドからスタッと飛び降りる。 マッサージを行い、血流をよくしたおかげか心臓からの出血が豪勢だ。勉強をした甲斐がある。 (これだけ健康になるのなら私もマッサージ、受けてみるのも悪くないですね。 できれば美人のマッサージ師さんにやってほしいところです。……別に他意はありませんが) リボルバーな上に古銃なのでサプレッサーはつけても意味がない。 銃声はしっかりとゴルガーンの屋敷に響いた。 マッサージ室の扉から、ゴルガーンの護衛たちがなだれ込んでくるのと、 ル・マット式リボルバーの弾丸が天井のライトを撃ち抜いたのは同時だった。 マッサージ室が暗闇に包まれ、ブラックスワンは自身の能力を発動する。 『黒染めの白鳥』。ブラックスワンの魔人能力。 半径五十メートル以内なら全てを自由自在に黒く染められる力。 ただそれだけの能力だが、故に夜や闇という環境では無類の便利さを誇る。 真っ暗なマッサージ室をさらに真っ黒にする。一寸先も見えないように。 例え暗闇の中だろうと、人が動けばわかるものだ。 故に、闇へ乗じて人が動く姿を、黒塗りの中に隠す。 二重の隠行。 黒く染める能力者だということも隠せて一石二鳥だ。 どうせ後でブラックスワンが下手人だとわかるが、帰るまでが暗殺なのである。 バレないに越したことはない。 ……なに? 中空には何もないのに黒く染められるのはおかしい? なにをおっしゃるうさぎさん、そこに空気は存在(ある)のだから、黒く染められて当然だ。 酸素も窒素も二酸化炭素もメタンも、浮遊する塵も全て黒く染めることができるのだ。 ただし、本当に黒く染めるしかできないゆえに、ブラックスワンもなにも見えなかったりする。 しかし今回は大丈夫だ。 マッサージ室どころか、屋敷の構造は完全に暗記したし、 飛び込んできた護衛達は足音や息遣いを隠そうとなんて、まったくしていない。 むしろ、何が起こった!! と怒号につぐ怒号を発している。 すいすいとブラックスワンは音を頼りに護衛達の間を抜けてマッサージ室の扉から廊下に出る、 ……そのちょっと前に、手持ちのリモコンのボタンを押す。 外から爆発音。送電線がぶっ飛び、屋敷が停電。 さらにそれに合わせて『黒染めの白鳥』で屋敷を、庭も含めて黒く染める。 もうここの住人は何も見えないだろう。 だが、あまり長居をしてもしようがない。 マッサージ師として屋敷を見回り、設備を確認した限り、 通常電源から非常用電源に切り替わるまで五秒程度しかないのだ。 ブラックスワンは廊下の窓から外に出て、庭を走り、塀を駆けあがって表通りへ出る。 きっかり五秒、『黒染めの白鳥』を解除する。 ゴルガーンの屋敷は非常用電源に切り替わり、光が灯る。 「命は戻りませんがね」 騒然とする屋敷を後目に、 ブラックスワンは道路に止めてあったレンタルカー(無音が特徴のエコカー)に乗って、 現場から去っていった。 「お仕事完了です」 ★・★・★ ところ変わって廃墟、現在のアジトに黒いソフト帽とスーツを着たブラックスワンが帰還する。 「ただいま戻りましたよっと、ヴィタさんいますー?」 「いるに決まっているだろう、ブラックスワン」 そこには彼のオペレーター兼マネージャー、ヴィタがいた。 効果的かつ素晴らしい仕事を行うためにブラックスワンが雇ったのだが、 今のところは実に良い仕事をしている。 今回の暗殺など、慇懃無礼なブラックスワンが依頼人と面会したのでは、 まず契約には結びつかなかっただろう。 やはり営業は必要……と裏社会の分担を思いつつ、ゆえに、と言葉を続ける。 「それで、これで足ります?」 「足りん。五百万ドルは雀の涙だ」 今頃は海外に高飛びしているだろうマッサージ師な依頼人の、渾身の報酬に酷い言い草である。 「マジですか、割と個人が一生遊んで暮らせる額だと思うのですが。 『足るを知る者は富む』ですよ?」 「老子か? 私に言われてもな、私の難病に言え」 「ですよねぇ、やっぱりもったいない……」 ブラックスワンは残念な気持ちになる。 教養があり、しかも仕事に真面目で有能。非常に得難い人材だ。 これから先の長い仕事人生、この相棒が欠けることを思うと非常にうんざりする。 「どれくらい持ちそうです?」 「そうだな……だいたい一年くらいか」 「キッツイですねぇ、流石にそんな大口の仕事がポンポンやってくるわけでもないですし……」 一番実入りが良く、そしてブラックスワンに適性があるのは暗殺である。 しかし、暗殺の仕事が一年に百個発生することはない。 それはどんな修羅の世界だ、となる。 けれど競合他社を全滅させて案件を独占すればあるいは……? と危険な考えにブラックスワンが取り憑かれかけた時、ヴィタがブラックスワンを見上げる。 「そうでもないぞ、これを見ろ」 「はて?」 ヴィタが手渡したのは一通の手紙である。 「お前が不在の時に、よくわからん奴がこれを渡しに来た」 「はぁ」 ブラックスワンはヴィタから受け取った手紙をポケットナイフで丁寧に開封する。 「主催者招集の選手(スター)と対決する『大会』、報酬は過去の改変……だそうだ。 招待状というよりかは、参加券のようなものらしい。これなら私の難病も治せるだろう」 「ふむ……五千兆円もあれば足りますか?」 「なんで日本のマイナーなネットミームを持ち出した? 足りるもクソもそんなもんが現実に現れたらハイパーインフレで日本円が紙屑になるだろ。 ジンバブエドルの再来だ」 「でももう一つの報酬にありますよ、ほら」 ブラックスワンは手紙をヴィタに見せた。 「……本当だ。MVP報酬。いや、大丈夫なのか、これ?」 「大丈夫では? ようは必要な分だけ切り崩して後は燃やせばいいんですよ」 ブラックスワンは軽く言ってから、ふと気づいたようにヴィタへ問いを投げかける。 「ところでですが、ヴィタ、好きな星はありますか?」 ブラックスワンはヴィタに視線を向けずに、地面を見ている。 廃墟の床はすっかり罅割れ、剥がれていて、泥のような地面が露出していた。 「……? そうだな……アンタレスだ。 さそり座の心臓。明るいし、色も火のように赤く、情緒がある」 ヴィタは廃墟の窓から月のない夜空を見上げて言った。 対してブラックスワンは下を見たままに応えた。 「そうですか、私は―――”地球”です。地球も星でしょう?」 「……そんなんありか?」 「 そんなんありだとわかってもらうことが(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、ひいては勝利につながると(・・・・・・・・・・・・)、私は考えます(・・・・・・)」 ブラックスワンは顔を上げて、右手に持った手紙をひらひらと振る。 どうやら手紙の内容に” 星(MY STARS)”という表現が多々使われていたことが、 ブラックスワンの琴線に触れたらしい。 慇懃無礼に、皮肉が濃くなるほど、ブラックスワンは容赦がなくなり、悪辣になる。 比例して仕事の完成度が上昇する。 それを理解したヴィタは本当に扱い辛いと思いつつも笑みを浮かべた。 「またぞろ、ろくでもないことを考え付いたな、頼もしいよ」 ブラックスワンは黒いのっぺらぼうな相貌で、胸へ手をやって自信満々に宣言した。 「それはもう、裏とはいえ社会人でございますから――仕事には真面目に取り組みますとも」 参加者一覧に戻る
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救う者たち ◆rCn09xUgFM 「残念だなぁ。愉快な時間って言うのは、どうしてこんなにも早く過ぎ去ってしまうんだろうか。 ……老いも死も存在しない俺たちと同じように、この時間も永遠で在れば良かったのにと。 俺は心からそう思わずにはいられないよ。……君も、そうは思わないかい?」 眩い宝石の中に虹を落とし込んだ様な美しい瞳を大仰に揺らして、童磨はさも悲しそうに言葉を漏らす。 去りゆく時間を惜しむ言葉とは裏腹に、彼の浮かべる表情はどこか真剣味に欠けていて。 へらへらと、けらけらと笑いながら発する言の音と真逆の意図を込めて喋る姿はどこかアンバランスで、不気味な雰囲気を醸し出していた。 とても、とてもではないが、たった今、互いの生と尊厳を奪い合う死闘を終えたばかりだとは思えない。 幾度も肉を裂かれ、永遠とも思える時間骨を砕き、殴り、殴られの果て。 ……最も、“鬼”でありその中でも上位の実力を誇る“上弦の弐”である童磨からしてみれば、どのような戦いであれ一方的に生を奪う催しに過ぎないのだが。 「今の俺は、君を褒め称えたい気持ちでいっぱいなんだぜ! ええと……何て言ったっけ。 ――あぁそうそう、めだかちゃんだ! 俺は、人の身で在りながら鬼である俺と渡り合った君を! 俺には及ばない再生力でいみじくも立ち上がる君を! 俺には及ばない速さで必死に縋り付く君を! ……どれ程無駄だとわかっていても、何度だって立ち上がってしまう君を! 俺は! 素晴らしいと思うんだ!」 木々を薙ぎ倒し、地を割って、夥しい血痕が散乱する死闘の痕跡を前にそぐわない快活な声音。 所々衣服が裂けてはいるものの、童磨の身体それ自体に傷口は見当たらない。 フローレンス・ナイチンゲール、そして目の前の少女と言う紛れもない強者との連戦を終えたとは思えない小綺麗な体。 爛々と瞳を輝かせて語りかける様は、倒れ伏すめだかとは正反対に玩具を与えられた童の如く喜悦に塗れている。 流暢に紡ぐ言葉に嘘はない。 彼は、目の前で地面に倒れ伏し苦々しげに自らを見上げる少女――黒神めだかのことを心から称賛していた。 「うん、君は良く頑張った。……だからもう、立ち上がらなくても良いんだよ。」 喜悦に微かな憐憫の色を差し込んで。 憐れむように、慈しむように、童磨は言葉を続ける。 地面へ腰を降ろし、優しくめだかの頭を撫でながら。 これまでもそうしてきたように、これからもそうしていくように。 「言ったろう? 俺はね、君のような人間を喰ら(すく)う為にこの世へ生まれたのだと思うんだ。 だからさ。もう、頑張らなくてもいい。強がらなくてもいい――無理を、しなくてもいいんだ」 先刻巡り合った女――フローレンス・ナイチンゲールと名乗った女と同じように、めだかもまた尋常ならざる回復力を保持していた。 皮を裂き、骨を折り、臓腑を貫いて尚死ねず。 幾度も膝をついて、敵わぬと理解しながらも、己が使命に殉じて立ち上がらざるを得ない少女。 彼我の実力差を理解せず、擦り切れた雑巾の如き姿はとても憐れだった。 ――あぁ、人間と言うのはいつだって変わらない。 ありもしない地獄を恐れ、ありもしない極楽に縋り、耳触りの良い言葉に溺れる。 世界はこんなにも楽しいというのに、それに気付こうともせずただ嘆き、怯えるだけのか弱い存在。 己よりも遥かに年少の者を祭り上げ、崇め奉る。 願い続ければきっと極楽へ辿り着けるのだと、四十を超えた大人が涙ながらに言の葉を紡ぐ愚かしさ。 或いは、今の彼女……そして、童磨がこの場所へと呼ばれる以前に相対していた鬼狩りの剣士のように。 “死ねば死んでしまう”人の身で、鬼と渡り合おうとする無謀、蛮勇。 憐れで、愚かで、儚い人間というイキモノを。それでも、童磨は救いたいと思っていた――心から。 故に、童磨は喰ら(すく)う。 もう脅えなくて済むように、もう悲しまなくて済むように。 童磨と一つになれば、悲しみからは解放されるのだと。 「君の事は忘れないよ。君は、俺と一つになって極楽へと辿り着くのさ」 最早言葉を発する気力も残されていないのか、彼女は童磨の事をただじっと見つめていた。 不気味な程にじっと、じぃっと。 「倒れ行く君の分まで、俺が皆を――人間を、救ってあげるから。安心してくれよ」 満面の笑顔を浮かべて告げる童磨。 頭部を撫でる手はゆっくりと、白い首筋に添えられる。 そして―― ベキリ、と 命が終わる音がした。 ○ × △ □ ○ × △ □ 黒神めだかは化物である。 これは、箱庭学園に通う大部分の生徒の総意に違いない。 支持率98%と言う圧倒的数値で自らの通う学校の生徒会長に就任したのは、彼女を語る上で序章も序章、寧ろ前書きレベルの事柄に過ぎず。 風紀委員長“モンスターチャイルド”こと雲仙冥利との校舎を揺るがすほどの死闘は今尚語り継がれる程であり。 “十三組の十三人”と呼ばれる一騎当千――否、一騎で千を逃がしてしまう猛者を相手取ったフラスコ計画凍結に於ける大立ち回りや、見るも語るも悍ましい“過負荷”との、箱庭学園の命運を賭けた生徒会戦挙などなど。 常に劇的であり不敵でる彼女に付随する伝説を挙げていけばその終わりが見えないのだが。 何よりも彼女が“異常”であると語られるのはその精神性だろうか。 見知らぬ他人のために生まれてきたと、そう公言して憚らない彼女の立ち振る舞いは、大言が霞むほどに公正明大であり清廉潔白である。 24時間365日、嘘偽りなくどんな者からの相談も受け入れ、例えそれが自らと相対する存在であっても救おうと奮闘する。 “完成”と呼ばれる“異常”を保持しており、抑えようもない殺人衝動であろうが全てを台無しにして、良いも悪いも無くしてしまう大嘘であろうが他者に全てを押しつける不慮の事故であろうが問答無用で観察し、持ち主を上回る習得度で完成してしまう。それ所か、最早観察すら必要とせず伝聞と推測だけで見た事もない異常性を120%完成させてしまう。 自らの“正しさ”を確認する為か欠けている部分を埋める為か、本能的に敵を求め。その本質を求めて『二歳の頃からの幼馴染』すら切り捨てる。 人の心が理解出来ず、それでも圧倒的な正しさを他者に突き付ける彼女の姿はまさしく、化物と言って相違ない。 誰よりも人間に尽くさんとするが故に、絶対的に孤高の存在で在り過ぎる彼女は今―― 「ふ、ふふ……私はこれからどうすれば良いんだろうな……」 地面に腰を降ろし、膝を抱えてわかり易く落ち込んでいた。 「まさか、私が善吉……否、それ以前に後輩たちすら負けてしまうとは…… 喜ばしい事、と思わねばならんだろうさ……!私は、私を超えてくれる者を育て上げたのだから、な」 ずーんと。 そんな擬音を表現したかのように項垂れる彼女。 強がってはいるものの、声はか細く暗がりに目を凝らしてみれば小刻みに体が震えている。 常であれば月光が彼女を柔らかく包み込み、さながら絵画のような美しさを燦然と周囲に主張していた筈だが、今現在の彼女からそんな様相は微塵も感じられない。 最大限好意的に例えて、ゴミ捨て場に捨てられたぬいぐるみといったところだろうか。 生徒会選挙 後に、聖夜の奇跡と呼ばれて語り継がれることとなるその日、彼女は全てを失った。 支持率98%という圧倒的な大差で生徒会長に就任した彼女は、支持率2パーセントという圧倒的大差で敗北し生徒会長の座を退くことになる。 神から勝利を約束された主人公であるとしか思えない存在であり。 どこまでも正しく、完璧であり、完成された彼女にとって今回の敗北を衝撃は全てのキャラクター性を崩壊させるには十分に過ぎた。 誰かのために生きてきた化物が、その誰かに見放されてしまえばそこに残るのは誰からも見捨てられた憐れな存在でしかない。 「ふはははははっはっは!!!! 私を倒しても第二第三の私が貴様たちの元へやってくるぞ!!」 勇者に敗れた魔王のようなことを言ってみたり。 「負けた、か……。漸く、アイツの傍に逝けるんだな」 悲しい事情を抱えたダークヒーローのようなことを言ってみたり。 「【完璧超人】生徒会選挙に参加してみた【敗れる】」 動画配信者のようなことを言ってみたり。 端的に言ってしまえば、滅茶苦茶落ち込んでしていた。 「ははははは……なぁ、誰か教えてくれ……私は、これから何をすればいい? どうやって生きていけばいい?」 光を失った瞳を虚空に向けて話しかけるのも、無理ない話だ。 これまでの十数年間、彼女にとって自らの人生とは見知らぬ誰かの役に立つためだけのモノだった。 誰かの笑顔が、感謝が、守るべき姿が彼女を此処まで突き動かしてきた。 そのために、どれほど傷付こうとも立ち上がってきた。 そんな彼女を真正面から穿つのは他ならぬ守るべき存在であり、それ故に彼女は生きてきた理由もこれから生きていく目的も失ってしまったのである。 皆を守ろうとする彼女を、皆は、守ってくれない。 普段の彼女であれば、こんな悪趣味な催しを開催するBBへの怒りで立ち上がったことだろう。 普段の彼女であれば、無残にもその命を散らした少女を思い、義憤に駆られ走り出したことだろう。 普段の彼女であれば、思考の合間に名簿を確認し、共に戦う仲間の姿を求めて動き始めたことだろう。 普段の彼女であれば、首に嵌められた殺人機械を見分し、何らかの対策を練っていたことだろう。 普段の彼女であれば、だが。 「貴様も、私から離れていくのか……?」 いじいじと。 拗ねた子供のように地面へ指を擦り付けていた彼女が最初に出会った生物は、紐状の気色悪い姿をした蚯蚓だった。 擦る、というよりは抉るような動作のためその場から逃げ遅れてしまった憐れな蚯蚓。 化物の指に掬われてしまった憐れな生き物は、本能的に必死で体を揺らし、その場を離れんともがき続ける。 そうして、ぴょんと指先から零れ落ちたかと思うと。 1ミリ、2ミリ、3ミリ。 黒神めだかは、そんな蚯蚓の姿をただ、ただひたすら悲しそうに見つめていた。 ○ × △ □ ○ × △ □ 「俺は童磨って言うんだ。君の名前は、何て言うんだい?」 「私は、黒神めだか――めだかちゃんと呼ぶがいい」 凛、と呼ぶには些か覇気が足りないが。 闇の先から現れた男を認識すると同時に、めだかは立ち上がっていた。 それが反射的であったのか、意図的であったのか彼女にはわからない。 スカートの裾に残る土塊を払う余裕もないことから、恐らく反射的であろうことは理解できるが。 数分前。 全ての生物から見放されたとすら思える絶望に浸っていた彼女の耳に突如届いた轟音。 丁度視界の先が木々に覆われていたため全容は掴めないが、何らかの建築物が崩れ落ちたであろうその音に釣られて視線を向けた先にあるのは闇色に塗られた空間だけだった。 木々のざわめきと、虫の音が聞こえるその場に微かな緊張感が漂う。 人は闇を恐れると言うが、この先に在る奇妙な圧力はそんな言葉で片付けられるものではない。 BBと名乗る少女が話していた言葉を信じるのであれば此処は殺し合いの場である。 常識的に考えてしまえば、見知らぬ人間に拉致された挙句に全員で殺し合えと言われて素直に殺し合いに応じるほど、人間の理性や生き様は脆くもなければ弱くもない。 この音はなんらかの事故であり、注意こそすれ警戒すべき事項ではない……筈なのだが。 そう楽観視出来ないほど、あの桃色の髪をした少女の死には現実感が溢れていた。 加えて、BBの言うことが真実であった場合、自らの手駒……或いは、率先して殺し合いを始める人間を参加者の中には配置するだろう。 そうでなくては、彼女の始めた催しは到底成立し得ない。 『そんな願いでも叶える』 そんなことを言っていた気がするが、余りにもリスクとリターンが釣り合っていない。 根拠の薄い景品に対してベットするには、リスクが勝り過ぎているだろう。 そもそもの話だ。 蠱毒というモノは、毒を持つ者を喰い合わせることで初めて成立するのだから。 だからこそ、彼女は闇を凝視する。 そして、緩慢な速度で歩きながら現れた男を前に彼女は確信した。 この男を、野放しにしてはならないと。 そうして現在に至り、向かい合う両者。 どこか神秘的な佇まいでめだかを見ている童磨に対して、めだかの表情は硬い。 その異常性故に他者から人外と評されることの多い彼女を以てして――童磨の存在は、余りにも化物が過ぎた。 “異常”“過負荷”“悪平等”と並々ならぬ猛者に相対した彼女であるが、目の前の男から受ける嫌悪感と威圧感はそれに勝るとも劣らない。 対峙するだけで鼻孔を擽る、脳漿と臓物と血液を混ぜ込んでぶちまけたような匂い。 そして、それ以上に彼の全身から漂う濃厚な死臭。 一人や二人では効かないであろうその香りに、思わず顔を歪めてしまう。 嫌悪感に混ざる感情は、恐怖か、或いは――。 「貴様、まさか――」 「君は、可哀想な目をしているなぁ。……まるで、誰かに裏切られたみたいな目だ」 人を喰った表情で、童磨は告げた。 「君みたいな人間を、何人も見てきたよ。俺にその気持ちはわからないけどさ…… 自分を犠牲にすることが誰かの為になると、本気で考えた挙句に裏切られてしまった。 そんな、憐れな目をしてる」 何か言葉を発そうとしていためだかの表情からハッと、色が失われるのに気付いてか気付かずか、童磨は流暢に言葉を紡ぐ。 普段のめだかであれば一蹴するであろう言葉が何故か、心に突き刺さっていた。 「でも、もう安心していい。――俺が、君の弱さを許してあげる。君を、救ってあげようじゃないか」 童磨に、めだかの過去を知る術など存在しない。 それでも、彼にはめだかの苦悩がありありと伝わってしまっていた。 なんて、憐れな女の子なんだろう。 童磨は心中でそう呟く。 彼は、教祖として様々な人間の苦悩を聞き続けてきた。 どこまでも可哀想な信徒の姿に、今のめだかの姿がぴったりと重なってしまっていた。 口元を押さえて紡がれる言の葉が、めだかの心に忍び込む。 「私を、救ってくれると……貴様は、そう言ったのか?」 「あぁそうだよ。俺が、君を救ってあげよう」 大きく息を吸って、大きく息を吐いた。 虹を嵌めこんだような美しい瞳を真正面から見据えためだかの問い掛けに、童磨は即答する。 さっきの子とは違って、素直な子だなあ……なんて、笑いながら。 こんなにも簡単に揺らぐなんて、俺が救ってあげなくてはと。 「私は、誰かのために動くことが自分の全てだと思っていた」 「うんうん」 「いつだって見知らぬ誰かの為に戦ってきたし、誰かを救うことこそが何よりも尊いものだと ……ずっと。そう、思っていたんだ」 「あぁ……君は間違ってない、だからそんな悲しそうな顔をしないでおくれよ」 悲痛な表情で、身を切るように思いを告げるめだかに対して、童磨は笑顔で言葉を続ける。 「でもそれは大きな間違いで――大きなお世話だった」 そこで、微かに童磨は違和感を覚える。 「私はきっと間違っていたんだろう。見知らぬ全員を救おうだなんて、考えなくともわかる荒唐無稽な話だ」 色を失っためだかの瞳に、真紅に燃える炎が宿っていた。 「だがそれでも、化物と呼ばれようとも、皆から嫌われようとも――」 めだかは確信している。目の前の男とはきっと相容れないだろうと。 童磨は確信していた。目の前の女はきっと救いを求めているのだろうと。 「――私は、人間が好きだ。」 たった一つ、残されたモノを振り絞る。 「だから、もう間違えたくない。今度こそ、私は皆のことを助けたい。 ……故に聞かせてくれ童磨よ――貴様の言う救いとは、なんだ?」 「簡単な話さ。君は、君たちは俺と一つになって極楽の一緒になるんだ 憐れな人間達を喰ら(すく)う。俺は、優しいからね」 何の躊躇いもなく告げられた手段。 それは、到底許容出来るようなものではない。 例え自分のやり方が間違っていたとしても。 彼女は――黒神めだかだけは、童磨の救いを肯定するわけにはいかなかった。 「あぁそうか……だったら貴様は――助からない」 それは、刹那の出来事である。 音速を超える速度で放たれる右拳。 轟!!!と。 音を置き去りにして繰り出される鉄拳は、童磨の弛緩した顔をいとも容易く打ち抜いた。 今のめだかは、自らが人と相容れないことを自覚している。 だから、放たれた拳の先に感じる血の温もりも気にならない。 骨の砕ける感触も、脳漿の弾ける感触も、一切合切意識の外へと押しやる。 「ああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 普通の人間であればとうの昔に絶命していても可笑しくはない威力で繰り出される拳のラッシュ。 頭、腕、胸、腹と上半身を隙間なく襲うそれは正しく暴力の嵐。 派手に舞い散る返り血に塗れて尚、めだかは目を逸らさない。 まるで、まるでこの暴力が全く意味を成していないことから目を逸らすかのように。 「うーん。悪くはない攻撃だけど、そんなんじゃ俺たちには意味がないんだよな」 「~~~~ッッッッッ!!」 確かに撃ち抜いた筈の顔面が、一瞬の瞬きの後に再生しているのを見てめだかは歯噛みする。 「随分と努力したんだろうね……。今まで受けたどんな拳よりも鋭い痛みが伝わってくるよ。 研ぎ澄まれて、摩耗した刀を見ているようでさ……痛々しくて見ていられないんだ。 あんまりにも可哀想だから、わざと受けてあげたのさ。そうすれば、力の差もはっきりして無駄な努力を諦めてくれるだろう?」 慈愛に満ちた表情で言葉を並べる童磨の体は、既に完全回復していた。 さしもの黒神めだかも困惑して溜息を吐露する。 球磨川禊、安心院なじみとでたらめな能力を持つ人間とは相対したことがあるものの、ここまでの出鱈目っぷりは珍しかった。 「貴様――本当に人間か?」 「ん? 言ってなかったかな? ……俺は、鬼なのさ」 口元を押さえにっこりと、笑って告げる童磨。 死闘の幕は上がったばかりだった。 ○ × △ □ ○ × △ □ 「いやぁ、俺たちと同じく、自らを再生できる者たちと何度も戦うのは久しい感覚だな ……色々と、不可思議な術を見られるというのは中々どうして、愉快なものだ!」 骸と化した黒神めだかを前に、童磨は手を打ちながら満足気な言葉を漏らす。 ナイチンゲールと名乗った彼女と同じように、苛烈な拳を繰り出す姿は童磨の好奇心を満たすには十分であった。 めだかの攻撃を、即座に童磨が再生するのと同じくして。 童磨の攻撃もまた、即座にめだかに再生されてしまっていた。 開幕早々泥仕合の様相を呈していたが、結果として勝敗を分けたのはその再生力だった。 めだかが再生する速度を上回る速度で繰り出される童磨の打撃。 回復力に圧倒的な差があるからこそ叶う、ノーガードでの暴力を前にめだかは防戦一方であった。 童磨の血鬼術『蓮葉氷』を吸い込んで尚、その拳を振りかぶる姿には思わず拍手を溢してしまったが、それだけだ。 無論、単純な暴力以外を互いに使用しなかったわけではない。 だが、炎刀であれスキルであれ、互いが傷を即座に回復するのであれば余計な手順を踏んでいるに過ぎない。 互いがどれほど相手を殺す術を保持していようとも、殺し切れないのであれば意味がないのである。 つまるとこ、最速最短で相手を殺し切る以外に決着は見えなかったこの戦い。 これまで幾度となく鬼狩りの剣士たちと戦ってきたが、結局いつだって生き残ってきたのは童磨であり。 結局のところ、このような座興の場に呼ばれたとて鬼の力を上回る者など存在しないのである。 最後まで立っていたのは、童磨だった。 「あぁ楽しかった、楽しかった! 俺より遥かに弱いというのに立ち上がるその姿、きっと俺は永遠に忘れまいよ」 とは言え、童磨の体にも疲労感が無いワケではない。 BBなる女が何かを仕掛けたのか、疲労の回復も遅くこのまま続けてもう一戦は勘弁願いたいと思ってしまう程であった。 これまでの戦いに敬意と憐憫、そして愛情を込めて救ってやらねばと。 手を広げて彼女を飲み込まんとすると同時、ゾブリ、と。何かが心臓を貫く感触を覚えた。 「―――――――――――――――ん?」 おかしい。 目の前の少女は確実に殺した筈だと、童磨にしては珍しく――困惑した表情を浮かべる。 胸部を貫かれるのは大した損傷ではないが、驚く気持ちに蓋をすることは出来ない。 「なるほど……これが、鬼に成るという感覚なのだな」 童磨とて、首の骨を折られた程度で消滅するワケではない。 それでも、拳の交わり合いを経て確認しためだかの再生力。 それが許容範囲を超えるタイミングを見計らって、完全に殺し切った筈なのになぁと小さく嘆息する。 「どうやら、いくつかのスキルは制限されているようだが…… 古賀二年生のスキルが奪われていなかったのは幸いと言うより他なるまい。 さしもの私も、不死の鬼を相手になんの備えもなく戦うのは不安が過ぎる」 淡々と、つい先程殺されたとは思えない気軽さで呟きながら腕を引き抜く。 「“観察”するのに少々時間がかかった、が中々どうして悪くない感覚だなコレは。 取り敢えず、取り急ぎ――鬼神モードとでも呼んでおくとしようか」 べろり。 真紅の舌先を血塗れの腕に這わせ“鬼”は笑う。 「なんだなんだ、君こそ本当に人間かい?」 「知れたことを。……私は――ただ人を救いたいだけの、化物さ」 ○ × △ □ ○ × △ □ 黒神めだかは化物である。 だが――それ以上に、どうしようもなく人間だった。 例え、誰かがその正しさを否定しようとも。 例え、誰かがその生き様を否定しようとも。 全てを失って尚、見知らぬ誰かを救わんとする彼女の姿は 例え自らの人間性を捨て去って尚、戦わんとする彼女の姿は どうしようもなく、人間だった。 【D-2/1日目・深夜】 【童磨@鬼滅の刃】 [状態]:疲労(中) [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~2、炎刀『銃』@刀語 [思考・状況] 基本方針:いつも通り。救うために喰う。 1:おいおい、本当に鬼になったのかい? 2:"普通ではない血"の持ち主に興味。 3:無惨様、猗窩座殿、下弦の彼……はてさて誰に会えるかな? [備考] ※参戦時期は少なくともしのぶ戦前。 ※不死性が弱体化しています。日輪刀を使わずとも、頸を斬れれば殺せるでしょう。 【D-2/1日目・深夜】 【黒神めだか@めだかボックス】 [状態]:疲労(中) [道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3 [思考・状況] 基本方針:見知らぬ誰かの役に立つ、それは揺るがない。 1:目の前の男が語る間違った救いを正す。 [備考] ※参戦時期は後継者編で善吉に敗れた直後。 ※本当に鬼になったのかは不明ですが、それに類する不死性を獲得しています。 ※いくつかのスキルに制限が加えられているようです。 Next 時を超えた遭遇 Previous ハザード&レスキュー 前話 お名前 次話 Debut 黒神めだか WORLD IS MINE(前編) 「救う」ということ 童磨 目次へ戻る
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■ToHeart2 ad 録音助手 ■ブラスレイター 録音助手 ■苺ましまろ encore 録音助手(小長谷啓太と共同) ■青い花 録音助手 ■灼眼のシャナS 録音助手(2・3話) ■セキレイ~Pure Engagement~ 効果 ■迷い猫オーバーラン! 録音助手 ■おとめ妖怪 ざくろ 録音助手 ■もっと To LOVEる -とらぶる- 録音助手 ■快盗天使ツインエンジェル ~キュンキュン☆ときめきパラダイス!!~ 録音助手 ■ゼロの使い魔F 録音助手 ■めだかボックス サウンドエディター ■めだかボックス アブノーマル サウンドエディター ■波打際のむろみさん サウンドエディター ■フューチャーカード バディファイト 録音(~34話) ■関連タイトル Blu-ray めだかボックス 第1巻
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お花畑に連れてって お花畑に連れてって アーティスト 黒神めだか(豊崎愛生) 発売日 2012年5月9日 レーベル ランティス デイリー最高順位 9位(2012年5月9日) 週間最高順位 12位(2012年5月15日) 年間最高順位 425位(2012年) 初動売上 1146 累計売上 1449 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 お花畑に連れてって めだかボックス ED 2 執行!箱庭生徒会 ランキング 週 月日 順位 変動 週/月間枚数 累計枚数 1 5/15 12 新 1146 1146 2 5/22 ↓ 303 1449 めだかボックス ED 前作 次作アブノーマル お花畑に連れてって 守護心PARADOX美郷あき 関連CD HAPPY CRAZY BOX
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と、決意と同時にサーベルが総一の頭を狙っていた。 「うわぁっ……!」 総一はそれを後ろに吹っ飛ぶようにして避け――実際は転んだだけだが――事なきを得た。 しかし脅威は終わっていない。 狂った椎名の標的は、未だ総一のままだ。 総一は起き上がって、椎名からの攻撃に備える。 椎名は、サーベルを大上段に構えて勢いよく振り下ろそうとしている。 万事休す、ただの学生である総一が避けられる道理はない。 だが、幸運の女神が微笑んだのか。 総一は今度の攻撃も避けることができた。 「……っくそ!」 それが分かるとすぐに体勢を整え、総一は椎名に背を向けて走り出す。 椎名も遅れはしたが、素早く総一の背中を追い始める。 森の中、2人だけの追いかけっこが始まった。 ◇◇◇ 森の中を横に並んで歩く影が2つ。 黒神めだかと、桂ヒナギク。 眉目秀麗、才色兼備、文武両道といった言葉が良く似合う、2人の見目麗しい女性がいた。 2人は殺し合いには乗らず、参加者を集めて主催者に対抗することを考えている。 「めだかさん、あれ!」 「……ふむ、参加者か」 そんな彼女たちは、森の中で走っている2人を発見した。 めだかは2人の名前を確認し、悠然と総一たちに近付いて行く。 常識人のヒナギクはそんなめだかを急かすのだった。 ◇◇◇ 森の中を縦に並び歩く影が2つ。 北条かりん、そしてイカロス。 ボーイッシュな少女と、おとなしげな少女の、似合わないとも言えるコンビ。 しかして2人は、この島においては主従関係を結んでいた。 「マスター。参加者です」 「……2人ね」 殺し合いに乗っている彼女たちは、獲物となる参加者を発見した。 かりんは慣れない手つきで手元の銃の残弾を確認して、男の元へと駆け寄ろうとする。 イカロスはあくまで従者として、かりんの後から歩いて行った。 ◇◇◇ 俺は椎名さんから逃げるために、必死に走っていた。 これまで同行して、彼女の強さはよく分かっている。 年は近いのだろうが、少なくとも戦闘に関しては俺よりも数段上だ。 出会ったとき、俺が襲われたときのことを思い出す。 拳銃を持った少女の元へと恐れずに走っていき、俊敏な身のこなしで少女を無力化。 そして第三者が介入するや否や、俺との逃走を瞬時に選択した。 まったく、信じられなかった。 まるで映画のアクションシーンを見ているかのようで。 流れるような、ともすれば美しくも見える戦闘だった。 あの男も言っていたが、本当に彼女は「くノ一」と呼ばれる、本物の忍者なのか。 でなければ、格闘技でも習っているのだろう。 どちらにしても、俺みたいなごく普通の高校生では相手にもならない。 さらに、正気に戻す方法もまったく考えつかない。 くそっ、どうすればいいんだ! なんて考えた次の瞬間にも、サーベルが背中を掠める勢いで向かってくる。 今は逃げることに集中した方が良い。そんな単純なことに今更気づく。 そして、もう何度目になるか分からない全力疾走をしようとして―― 突然、4人の女の子が出てきた。 ◇◇◇ 「……」 互いに予期せぬ人たちが表れたため、6人は固まってしまった。 椎名は現れた4人に戸惑いサーベルを構えもせず。 かりんは拳銃を誰に向けるかを考えて。 ヒナギクは全員の挙動に目を光らせ。 総一は椎名が攻撃をしてこないことに安堵し。 イカロスは2人の女性の戦闘能力を推し量っていた。 そんな硬直した場を崩したのは。 「私は箱庭学園生徒会長、黒神めだか。24時間365日、私は誰からの相談でも受け付ける!! そこの貴女、なにか思うことがあるのならば、悩み事があるのならば、私に吐き出すがいい!!」 という、荒唐無稽な言葉だった。。 もちろんめだかとしては、総一を攻撃する椎名への発言で。 攻撃をやめろ、私と話をしろ、という意思表示だったのだが。 その場にいた誰も予想しない人物から、声がかかった。 ◇◇◇ 黒神と名乗る女性から、急に発せられた言葉。 私はそれに、なぜか怒りと嫌悪感が湧いてきた。 何を無責任なことを言っているのか。 だったら今ここで、私の妹を助けてくれと言ったら助けてくれるのか。 無理に決まってる。 殺そうとした男のことも忘れ、黒神めだかへの殺意に心を委ねる。 「……だったら相談です、黒神さん」 と言いながら、後ろの手に持った拳銃を握りしめる。 「む?貴方は……北条かりん殿か」 「……はい」 そしてめだかの方を向く。 「ああ、何故名前を知っているのか不審に思われたなら申し訳ないな。 しかし勘違いしないでくれ、支給品に参加者の詳細名簿が入っていただけだ」 「そんなことは、どうでもいいから……」 ゆっくりと拳銃をめだかに向け。 「……死んでくれる?」 殺意を込めて、引き金を引いた。 ◇◇◇ 発砲音が聞こえても、めだかさんは動かなかった。 撃たれたのかと思ったけど、そうではないらしい。 「……くそっ、イカロス!」 北条かりんが外しただけのようだ。 拳銃にも慣れていないところを見ると、ただの少女なのだろう。 「全員、殺して!」 ――かなり、精神面が危ないようだけど。 「はい、マスター」 イカロスと呼ばれた少女がめだかさんに向かっていく。 手には波打つような刃の剣――確か、フランベルジェといったはず――を持っている。 大きく振りかぶって、薙ぎ払う。 ぶうん、と風を切る音。 身の丈以上の長さがあり、かなり重いはずの剣を、少女は軽々と振る。 しかし、めだかさんはそれを扇子で止めていた。 2人とも、相当な馬鹿力らしい。 (……どんなアクションゲームよ!) 心の中でツッコミを入れる。どうやらこの島では常識は通用しないようだ。 例えば。何もしていないのに、斬りかかられたりする。 サーベルの一撃をバットを構えて防ぎ、跳ね返す。 「まったく、早く知り合いと合流したいっていうのに!」 多少の怒りも含ませながら、ヒナギクは山本のバットを振って刀にする。 狂った忍者との戦いが始まった。 ◇◇◇ 追われていたはずの総一は、いつの間にか置いてけぼりにされていた。 ここに居たのが自分第一の現実主義者だったなら、助かる為にすぐに逃げただろう。 けれども総一は、その場から動こうとはしなかった。 (北条かりん……やっぱりあの子だったのか) 同じゲームの参加者『だった』、総一を襲ったこともある少女。 死んでしまったはずの少女が生きていることは不思議だったが。 少女が再び殺し合いに乗っていることが、総一にはショックだった。 (止めさせないと!) 少女に再び道を間違えさせるわけにはいかない。 ある種の使命感すら持って、総一はかりんに近付いた。 ◇◇◇ (くっ、うまくいかない……) かりんは内心、舌打ちをした。 (運がいいと思ったのに……) 数時間前のスタンド使いもそうだが、この島には強い人間ばかりだ。 この2人の女性は、とても楽に殺せる相手じゃない。 イカロスの馬鹿力でも敵わないのだから。 (どうする!?) 焦りが心を支配する。 自分だけが逃げれば、イカロスは捕まってしまうだろう。 そうなると1人きりになって、最初に逆戻りだ。 かといってイカロスと共に逃げれば、間違いなく女――黒神めだかは追って来る。 修羅場を潜り抜けてきたわけでもないかりんは、機転を利かせることもできず。 今の状況は、まさに八方ふさがりだった。 (どうする?どうする?どうする?) 「大丈夫?」 「!?」 唐突に声をかけられて、背筋が凍る。振り向くと、最初の標的だった男がいた。 「……何?」 「君を助けたい。俺は君を知っている。殺し合いに乗るような子じゃない」 早口で話す男の真意が分からなかった。 こんな男は知らないし、分かったような事を言われるのも腹が立つ。 「あなたにどうこう言われる筋合いはない!」 拳銃を男に向ける。脅しと本気が半々だ。 しかし男は動じない。 「……死にたいの?」 「君は撃たない」 断言される。拳銃を持つ手が震えた。 なんで、なんで拳銃を怖がらないんだろう。それが不思議で、怖かった。 「君は撃たない。優しい子だから」 男は子供をあやすように、私に優しく声をかける。 殺し合いだということを感じさせないその声が、なんだか、とても、心に響いた。 「殺し合いに乗ったのも、誰かの為なんじゃないのか?」 男が聞いてくる。 そうだ、かれん――。私はかれんの為に。 「そうよ!私はかれんの為に、優勝しなきゃいけな」 「だったら!」 言葉を遮られて、うっ、と詰まる。それくらい、男の声には有無を言わさぬ迫力があった。 「俺が協力する。元の世界に戻ったら、その子を助けるために何でもする」 力強く、言葉を続ける男。その目は真剣そのもので、そして―― 「だから――人殺しなんて、やめてくれ」 男は泣いていた。 情けない、と思う反面、かっこいい、とも思った。 今まで、私のことをここまで考えてくれた人はいなかった。 「わ、私、は……」 泣きそうになる。拳銃を持つ手は震えまくっている。 この男が、怖かった。私の事を知らないくせに、心配してくる男が。 「人殺しをして、そのかれんちゃんは喜ぶのか?」 男は私の心を覗き込んでくる。ズカズカと、遠慮なく。 けれど、と心が揺れる。つまりこの男は、本気で心配しているんだ。 初めて会った、名前も知らない筈のこの私の事を。 「……銃を渡してくれないか」 男は再び、優しく声をかける。 その言葉で決心した。今はこの男を、信じてみよう。 この人なら、どうにかしてくれる。そんな期待を込めて、銃を渡そうとして近寄った瞬間。 男の胸から、剣が生えた。 ◇◇◇ 「大丈夫ですか、マイマスター」 後ろから、そんな声が聞こえる。 この声はイカロスと呼ばれた少女か、と激痛に耐えながら考える。 視線を下に向けると、自分の血に染まった剣が見えた。 自分の胸から剣が生えているところを見るなんて、夢にも思わなかった。 あるいは、今この瞬間が夢なのか。 いや、夢じゃない。俺の前には確かに――北条かりんがいる。 泣きそうな顔をして、俺を見ている。信じられない、といった顔だ。 「……気に、しないで、くれ」 どうにか言葉を発する。気にするな、君のせいじゃない、そう伝えたかった。 しかし、その言葉を聞いたかりんは、余計に顔を歪ませた。 そして俺に背を向けて走り出す。何かを吹っ切るように、何かから逃げるように。 「マスター!」 この少女、イカロスが俺を刺したのは、恐らくかりんの為なのだろう。 なんでかは知らないがかりんに忠誠を誓っていて、そしてかりんに近寄った俺を敵と認識して刺した。 そんなところだろう。 お互いかりんを心配しての行動だったとしたら、報われないなと薄く笑った。 だがすぐに痛みが走り、顔が引きつる。 「マスター!待ってください!」 どうにかイカロスを目で追うと、かりんの消えていった方向を見ている。 走ってかりんを追おうとしたのだろうが、それは黒神めだかさんが許さなかったようだ。 「邪魔をしないでください!」 と言いながらも、武器なしで倒せる相手ではないと踏んだのだろう。 イカロスは俺の体から、剣を引き抜いた。 「ぐっ、あああ!!」 強引に引き抜かれたせいで、強烈な痛みが神経を伝わり、筋肉が、脳が、悲鳴を上げる。 地面に膝をつく。力を入れようにも入らない。そのまま前に倒れ込んだ。 分かる、自分はもう死ぬのだと。血と共に力が無くなるのを感じる。 ああ、北条かりんは、大丈夫だろうか。殺し合いに、乗ることはないだろうか。 考えてみれば、自分はこのバトルロワイアルで何一つ達成しないまま死ぬ。 麗佳にも二度と会えない。 主催者に対抗することも叶わない。 椎名さんも、結局正気に戻せなかった。後悔ばかりが頭をよぎる。 そういう運命だったなんて、割り切ることは出来ないけど。 いまさら何を言っても遅いのだろう。もう、眠くなってきた。 つまり、これは。 「……ゲームオーバー、ってことかな。はは……」 自嘲めいた笑いと共に、少年はその一生を終えた。 【御剣総一@シークレットゲーム-KILLER QUEEN- 死亡】 ◇◇◇ 「ふう、やっと倒れた」 桂ヒナギクは、自分にサーベルを向けてきた少女を見下ろす。 忍者のような身のこなしには苦戦させられたものの、相手も疲労が溜まっていたようだ。 激しい戦闘の末、少女は電池が切れたように倒れて気絶した。 狂ったように攻撃してきたことも含めて、この少女には聞きたいことが多くある。 だがそれも、少女の目が覚めてからになるだろう。 「さて、と……」 周りを見ると、未だにめだかさんはイカロスと闘っていた。 そのそばには、少年――詳細名簿には御剣総一とあった――が倒れている。 「あれって……死んでる!?」 戦闘に巻き込まれないよう静かに近付いてみると、確かに死んでいた。 胸には酷い傷があり、そこから大量の血が流れ出ている。 おそらくは、イカロスの剣によるものだ。よく見れば、今も血が付着している。 許せない。けれど、今はめだかさんと闘っているから手出しは出来ない。 一応、御剣総一の物だろうデイパックを回収しておく。 「……あれ?」 そういえば、イカロスがマスターと言っていた、北条かりんがいない。 いきなり発砲するあたり、彼女もそうとう精神が参っているに違いない。 話を聞きたかったが、いったいどこへ行ったのだろうか。 そして、一番の問題は、この先どうするか。 めだかさんとイカロスの闘いに、どう決着がつくかにもよるのだが。 あと数十分もすれば、放送が始まるはずだ。それを聞いてから決めるのもいいだろう。 戦闘音が響く中、桂ヒナギクは今後のことについて思考することにした。 【E-4 森/早朝】 【北条かりん@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】 【装備:S W M37エアーウェイト3/5@現実】 【所持品:支給品一式、S W M37の弾丸45/45@現実、ランダム支給品×2】 【状態:健康、精神的ショック】 【思考・行動】 0:????? 1:優勝してかれんの元に賞金を持って帰る? 2:イカロスと共に参加者を皆殺し? 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※黒神めだかの名前と容姿を記憶しました。 【イカロス@そらのおとしもの】 【装備:フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:マスターの命令に従う。 2:命令通り参加者の皆殺し。 3:めだかを殺して、マスターと合流。 【備考】 ※本編開始前からの参戦。 ※桜井智樹ではなく北条かりんがマスターです。 ※武器は没収、羽根で飛ぶ事は制限です。 ※馬鹿力は制限されていません。 【黒神めだか@めだかボックス】 【装備:原初の海@ペルソナ4】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×1】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:桂二年生と行動。 2:主催者から参加者全員に謝らせる。 3:イカロスを捕える。 【備考】 ※オリエンテーション開始直前からの参戦。 ※参加者全員の顔と名前を一致させています。 ※乱神モードは3時間待って10分、改神モードは制限で1日1回の制限です。 【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】 【装備:山本のバット@家庭教師ヒットマンREBORN!】 【所持品:支給品一式×2、羽根の付いたランドセル@Kanon、こけし@そらのおとしもの、 サーベル@ハヤテのごとく!参加者全員の全身写真@その他、ランダム支給品×2】 【状態:疲労(小)】 【思考・行動】 1:めだかさんと行動。 2:このゲームを止める。 3:少女(椎名)が目を覚ました後、話を聞く。 【備考】 ※アテネ編終了後からの参戦です。 ※めだかの知り合いの事を教えてもらいました。 ※参加者のある程度の顔と名前を一致しました。 ※北条かりん、イカロスを危険視しています。 【椎名@Angel Beats!】 【装備:なし】 【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2】 【状態:気絶、疲労(大)】 【思考・行動】 1:……。 【備考】 ※ユイ消滅前からの参戦。 ※ギアスは解けたようです。 【フランベルジェ@とある魔術の禁書目録】 イカロスに支給。 一八〇センチを越える巨大な剣で重さも相当。 両刃の刀身は波状に作られており、肉を引き裂き、止血しにくくする。 治りづらい傷を作るため、「死よりも苦痛を与える剣」として知られる。 天草式十字凄教に所属する建宮斎字は、これを片手で振りまわしている。 剣ツルギ物モノ語ガタリ 時系列 つぎへの方向 仮面は微笑む。 投下順 つぎへの方向 堕ちないネイロ 御剣総一 DEAD END 椎名 HEROES 生徒会の一存 黒神めだか 桂ヒナギク fallen down 北条かりん イカロス
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ワイルドスワン・クールブレイン ◆MGy4jd.pxY 冷たい夜風が吹き荒れる。 愛用の白衣と、美しい髪を風に靡かせ、森林を歩く女。 白い羽の髪飾りを、しなやかな手で庇いながら、軽やかに木々の間をすり抜けて行く。 もちろん、夜の散歩を楽しんでいる訳ではない。 (犠牲者を最小限に止め、尚且つここから脱出する為、私に出来る事) 白鳥スワンは、冷静に活動を始めていた。 この異常事態において、メカニックのスワンが成すべき行動は…… 『人命救助の為、逸早く首輪を分析、解除する』事だ。 名簿と地図は、すでに確認を済ませている。 詳細によれば、スワンの支給品は三つ。 デイバックに入っていたのは、その内の一つ、琥珀色の香水『キラ・コローネの作った人間香水』だけだった。 手にした紙には、残りの支給品の『炎の騎馬』と『亡国の炎』の隠し場所が示されている。 隠し場所は、スワンが飛ばされた場所からさほど離れていない。 時折、地図を確認しながら、スワンは砂漠の方向へ歩を進めていた。 紙に書かれた通り、鬱蒼としていた森林の木々が、徐々に途切れ始めた。 目印代わりに置かれた、光炎を放つ土器。 そこから、数メートル先の一際大きなアカシアの木の下、闇と見紛う黒いシート。 「これね」 スワンは、シートを勢い良く剥いだ。 小型の土器で燃えている火が、おそらく『亡国の炎』 その炎が照らすのは、火炎形のフルカウルに包まれたマシン『炎の騎馬』だった。 細部を観察し、頭の中で展開図を開く。 構造さえ分かれば、乗りこなすのはさほど難しく無い。 地図から推し量ると1エリア四方は3、4キロ。 移動手段は必要だった。 そう、ドギーや地球署の仲間と、そして家族を殺された深雪達と、早く合流する為にも。 「……ドゥギー」 スワンは最愛の男であり、無二の親友であるドギー・クルーガーの名を呟く。 広間の様子からすれば、このバトルロワイヤルに嬉々として乗る者の存在は否めない。 図らずも、戦いに巻き込まれる事があれば、ドギーは危険を顧みずに立向かっていくだろう。 スワンはドギーの雄姿を思い浮かべた。 彼の心に燃える火は、悪人どもには地獄の業火。 ドギーが無益な殺し合いを目の前に尻尾を巻いて逃げる筈が無い。 だが、ロンには悪を裁く正義の戦いも、楽しみの一つに過ぎない。 このバトルロワイヤルの目的、それは退屈しのぎなのだから。 その対象は、参加者同士の『殺し合い』だけでは無い筈だ。 脱出を企む参加者の動向、そして、それが失敗に終わった時の失意や絶望、そのすべてを貪る気なのだ。 盗撮、盗聴、スパイ……見物を楽しむ為の用意を、きっと、周到に幾重にも張り巡らせている。 ランダムに支給される品も、余興を盛り上げる小道具。 もとより、スワンはそんな余興に付き合うつもりはさらさら無い。 ならば、殺し合いに利用される前に壊してしまえばいい。 人間で作った香水に興味など無い、一国を焼き尽くす亡国の炎もスワンには必要無いのだ。 スワンは、デイバックから琥珀色の小瓶を取り出し、亡国の炎へ投げ入れた。 そして、姿無き観察者へ向け『宣戦布告』した。 「これは、反撃の狼煙よ。首輪は必ず外して見せるわ。それが、私なりのバトルロワイヤルなの」 颯爽と白衣を翻し、炎の騎馬に跨った。 亡国の炎が螺旋を描き、琥珀色の瓶を覆う。 炎熱が中の液体の温度と圧力を上げる。 スワンが爆音を上げて走り去った時、瓶内部の圧力が限界点に達した。 液体が瓶を破砕する。 瞬時に気体と化した人間香水が大気に拡散した。 亡国の炎はそれを逃さない。 白煙を吐き散らし天高く舞い上がる火竜となって、すべて飲み込んだ。 ‡ 追い風に乗って、白煙がスワンを追い越していく。 九十九折りの林道を抜けたその先には、砂漠が広がっていた。 「方向、変えたほうが良さそうね」 市街地の方角へ目を向けた時、視界の端に黒い人影が映った。 こちらへ近づいてくる、黒装束を纏ったその姿は見覚えがあった。 『理央』ロンにそう呼ばれていた青年。 理央が発したのはたった一言だけだったが、唸る様に搾り出された声がロンに対する怒りを露にしていた。 意味深なロンとの会話、二人の間には何か複雑な事情がある。 一見した所の印象はそうだった。 実はそう見せかけて、理央はスパイで、ロンとのやりとりが仕組まれた物だとしたら…… (ねぇ、ドゥギー。私一人で接触するのは無茶かしら?でも非常事態よ、仕方ないわよね。それに、無茶は地球署の専売特許だもの) スワンは充分な距離をとり、炎の騎馬を止めた。 胸で心臓が早鐘のように鳴り響いていた。 【名前】白鳥スワン@特捜戦隊デカレンジャー [時間軸]:第46話『プロポーズ・パニック』後 [現在地]:D-10砂漠 1日目 深夜 [状態]:健康 [装備]:SPライセンス [道具]:炎の騎馬、支給品一式 [思考] 基本方針: 首輪を解除する 第一行動方針:地球署の皆&深雪の家族と合流する 【名前】理央@獣拳戦隊ゲキレンジャー [時間軸]:修行その47 幻気を解き放った瞬間 [現在地]:D-10砂漠 1日目 深夜 [状態]:健康 ロンへの怒り [装備]:不明 [道具]:不明 [思考] 基本方針:殺し合いには乗らない。乗った相手には容赦しない。 第一行動方針:メレと合流する。 第二行動方針:北西の森へ進む。